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中国特許法施行規則及び特許審査ガイドラインの改正及び施行



中国特許法施行規則及び特許審査ガイドラインの改正及び施行
 
中国特許法は、第4次改正が20201017日に採択され、改正内容は202161日に正式に施行された。全体的に言えば、第4次特許法改正では、信義誠実の原則、特許オープンライセンス制度、特許期間の調整及び延長、部分意匠及び意匠の国内優先権、新規性喪失の例外期間の拡大、特許侵害及び詐称に対する罰則の強化等、幾つかの重要な規定が導入された。しかし、新特許法に対応する施行規則及び審査ガイドラインが長期間公表されていないので、移行期間中の関連業務に対応するために、中国国家知識産権局は、4つの暫定措置を相次いで発表した。暫定措置は、主に、次の点に関するものである。
1.移行期間内、法定期間に関する必要な手続き上の規定を提供した。
2.新特許法制度の移行期間内における特殊な適用範囲を規定した。
3.ハーグ協定に基づき、意匠の移行期間内における国際出願の作業の方向性を規定した。
新特許法の発効から2年半を経て、中国政府は、20231221日に、『中華人民共和国特許法施行規則』の改正の採択を公表し、また、同日に『特許審査ガイドライン』の改訂版も公表した。上記施行規則及び審査ガイドラインの改正内容は、2024120日から施行された。改正後の施行規則及び審査ガイドラインにおける重要性の高い情報や特殊性のある情報について、本文では、特許出願、特許権取得及び維持に関する改正の要点を次のようにまとめる。
一、         優先権の回復、優先権主張の追加又は訂正
以前の施行規則及び特許審査ガイドラインの規定によれば、出願人が優先期間に従って出願を提出しなかった場合、後日、当該優先権の回復を請求することができなかった。また、出願の提出後、優先権の追加は認められなかった。改正後の施行規則及び特許審査ガイドラインの規定によれば、出願人は、優先権の回復又は優先権主張の追加と訂正を請求することができる。
1. 優先権の回復(Rule 36-発明特許出願及び実用新案登録出願に適用される
改正後の施行規則の規定(Rule 36)によれば、出願人は、同一の主題について優先期間を徒過して発明特許出願又は実用新案登録出願を提出した場合、正当な理由があれば、期間満了から2ヶ月以内に優先権の回復を請求することができるが、特許庁による公表の準備が終了する前に請求しなければならない。中国国内段階に移行したPCT出願についても、同様に優先権の回復を請求することができる。期間は、中国国内段階への移行と同時に、又は遅くとも中国国内段階への移行日から2ヶ月以内である。請求に必要な書類と料金は次の通りである。
パリ条約に基づいて提出された発明特許出願又は実用新案登録出願について、出願人が優先権の回復を請求する場合、優先権の回復の請求書を提出し、その理由を説明し、権利回復請求料と優先権主張料を支払うとともに、他の必要な手続き(例えば、先行出願書類の写し、優先権譲渡の証明書類等の提出)を行わなければならない。規定を満たす場合、審査官は、権利回復請求の承認通知書を発行し、当該優先権を回復しなければならない。規定を満たさない場合、審査官は、出願人の権利回復請求を却下し、通知書において回復できない理由を説明しなければならない。
中国国内段階へ移行したPCT出願について、当該出願の優先権の回復が国際段階において既に受理官庁によって承認された場合、特許庁は通常、疑義を呈することはない。出願人は、国際出願の国内段階への移行の際に、再び回復手続きを行う必要はない。出願人が国際段階において優先権の回復を請求しなかったか、又は、回復の請求を提出したが受理官庁に承認されなかった場合、正当な理由があれば、国内段階への移行日から2ヶ月以内に優先権の回復を請求することができ、優先権の回復請求書を提出し、その理由を説明し、権利回復請求料と優先権主張料を支払う。また、先行出願書類の写しを国際事務局に提出しなかった場合、先行出願書類の写しも併せて添付しなければならない。上記規定に従わず回復手続きを行った場合、審査官は、優先権を要求しなかったものと見なす旨の通知書を発行しなければならない。
なお、改正後の特許審査ガイドラインにおいて、特許法施行規則第37条(優先権の追加又は訂正要求)の規定に該当する場合、施行規則第36条の規定が適用されないことも規定された。
2.優先権の追加と訂正(Rule 37-発明出願及び実用新案出願に適用される
以前の実務によれば、出願人は、特許出願を提出した当日に優先権を完全に主張しなければならず、出願日の後に優先権の追加を請求する機会はなかった。出願人が、優先権の主張時に、優先権出願の出願日、出願番号及び原受理機関の名称のうちのいずれか1つ若しくは複数を明記しなかったか、又は誤記した場合、指定期間内に優先権出願の出願書類の写しを既に提出していれば、審査官は、手続き補正通知書を発行し、指定期間内に補正を行うよう出願人に要求する。
改正後の施行規則の規定(Rule 37)により、発明特許又は実用新案の出願人は、優先権を既に主張した場合、優先日から16ヶ月以内又は出願日から4ヶ月以内に優先権主張の追加又は訂正を請求することができる。改正後の審査ガイドラインにおいて、施行規則第36条の規定に該当する場合(優先権回復の請求)、特許法施行規則第37条(優先権主張の追加又は訂正)の規定が適用されないことがさらに規定された。
二、         新規性喪失の例外規定
1.特許法第24条の規定
202161日施行の特許法第24条の規定により、特許を出願する発明創造は、出願日前の6ヶ月以内に、次のいずれかに該当する場合、新規性が喪失することはない。
1)国家で緊急事態又は非常事態が発生した際、公共の利益のために初めて公開された(事由1)。
2)中国政府によって主催又は承認された国際博覧会で初めて展示された(事由2)。
3)所定の学術会議又は技術会議で初めて発表された(事由3)。
4)出願者の同意なしに第三者により内容が漏洩した(事由4)。
上記事由1は、特許法に規定されている新規性喪失の例外規定の適用の事由として新たに追加された。
2.改正後の施行規則及び特許審査ガイドラインの規定
1)事由1(国内で緊急事態又は非常事態が発生した際、公共の利益のために初めて公開された)
改正後の施行規則(Rule 33)において、出願の発明創造が特許法第24条第1項に記載される状況(国内で緊急事態又は非常事態が発生した際、公共の利益のために初めて公開された)に該当する場合、国務院特許行政部門が必要と認めた時に、指定期間内に証明書類を提出するよう出願人に要求できることが明確に規定された。
特許法第24条第1項に記載される事由(国内で緊急事態又は非常事態が発生した際、公共の利益のために初めて公開された)について、改正後の審査ガイドラインでは、次のように規定されている。
「特許出願する発明創造が、出願日前の6ヶ月以内に、国内で緊急事態又は非常事態が発生した際、公共の利益のために初めて公開され、出願人が出願日前にそれを既に承知した場合、出願の提出時に請求書において声明し、出願日から2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。出願人が出願日後にそれを自ら知った場合、その情報を知ってから2ヶ月以内に新規性喪失の例外規定の適用を要求する声明を提出し、証明資料を添付しなければならない。審査官が必要と認めた場合、指定期間内に証明資料を提出するよう出願人に要求することができる。出願人が特許局からの通知書によりそれを知った場合、当該通知書に指定された回答期間内に、新規性喪失の例外規定の適用にかかる回答意見を提出し、証明書類を添付しなければならない。国内で緊急事態又は非常事態が発生した際、公共の利益のために公開されたことを証明する資料は、省級以上の人民政府の関連部門によって発行されるものでなければならない。証明資料において、公共の利益のために公開された理由、日付、並びに当該発明創造の公開日、形式及び内容を明記し、公印を押印しなければならない。」
2)事由2(中国政府によって主催又は承認された国際博覧会で初めて展示された)
改正後の施行規則(Rule 33)では、特許法第24条第2項にいう「中国政府によって承認された国際博覧会」の定義として、元の施行規則(Rule 30)の規定、即ち「国際博覧会条約に規定された博覧会国際事務局に登録又は承認された国際博覧会」がそのまま援用された。改正後の審査ガイドラインの規定により、事由2(中国政府によって主催又は承認された国際博覧会で初めて展示された)に基づいて新規性喪失の例外規定の適用の声明及び証明資料を提出する時期、内容及び形式に関する規定は、元のガイドラインの規定とほぼ同様であるが、改正後の審査ガイドラインの規定により、元の審査ガイドラインに規定されたとおり、「博覧会の主催機関」が国際博覧会に関する証明資料を発行することができるほか、「博覧会の組織委員会」も、同様に必要な証明資料を発行できるようになった。
3)事由3(所定の学術会議又は技術会議で初めて発表された)
改正後の施行規則(Rule 33)において、特許法第24条第3項にいう「所定の学術会議又は技術会議」の定義として、元の施行規則(Rule 30)の規定(「国務院の関連責任部門又は全国的な学術団体によって開催される学術会議又は技術会議」)がそのまま援用されたほか、「国務院の関連主管部門が承認した国際機関によって開催される学術会議又は技術会議」がさらに追加された。改正後の審査ガイドラインにおいて、事由3(所定の学術会議又は技術会議で初めて発表された)に基づいて新規性喪失の例外規定の適用の声明及び証明資料を提出する時期、内容及び形式に関する規定は、元のガイドラインの規定と同様である。
4)事由4(出願人の同意なしに第三者により内容が漏洩した)
事由4については、元のガイドラインの「出願人は、出願日前にそれを既に知った場合、特許出願の提出時に請求書において声明し、出願日から2ヶ月以内に証明資料を提出しなければならない。出願人は、出願日後に自らそれを知った場合、情報を知ってから2ヶ月以内に新規性喪失の例外規定の適用を要求する声明を提出するとともに、証明資料を添付しなければならない。審査官が必要と認めた時、指定期間内に証明資料を提出するよう出願人に要求することができる」という規定が援用されたほか、改正後の審査ガイドラインにおいて、「出願人が特許庁からの通知書によりそれを知った場合、当該通知書に指定された回答期間内に、新規性喪失の例外規定の適用にかかる回答意見を提出するとともに、証明書類を添付しなければならない」ことがさらに規定された。
3.他の重要規定
改正後の審査ガイドラインの規定により、事由1(国内で緊急事態又は非常事態が発生した際、公共の利益のために公開された)の場合、他人がその発明創造を知った後で再度公開することは、特許法第24条第1項に記載される状況とする。事由4(出願者の同意なしに他人により内容が漏洩した)の場合、第三者がこのように公開された発明創造を知った後で再度公開することは、特許法第24条第4項に記載される状況とする。
三、         引用による追加
2024120日に発効した特許法施行規則において、出願人に有利な規定、即ち、「引用による追加」の規定が追加された。2024120日以降、出願人が特許出願を提出した後に、提出した明細書、特許請求の範囲若しくは図面に内容の漏れ、又は、明細書、特許請求の範囲若しくは図面の提出が漏れていることを発見した場合、出願人による関連補正が認められ、元の出願日を維持することが可能である。出願人による上記補正が認められる条件としては、出願人が中国特許出願を提出した当初、規定を満たす優先権を主張し、また、主張された優先権の出願書類に、漏れた内容が含まれている必要がある。
上記の引用規定は、パリ条約を通じて中国で出願する通常出願と、中国の国内段階に移行するPCT出願に対し、異なる点がある(以下参照)。
1.通常出願
改正後の施行規則第45条の規定により、発明特許又は実用新案の出願について、特許請求の範囲、明細書若しくはそれらの内容の一部が漏れ、又は、提出に間違いがあるが、出願人が提出日に優先権を主張した場合、提出日から2ヶ月以内、又は、国務院特許行政部門が指定した期間内に、先の出願書類を引用することにより補充提出することができる。補充提出された書類が関連規定を満たす場合、書類が初めに提出された提出日を出願日とする。改正後の審査ガイドラインの規定により、引用による追加の請求を提出する際に、引用による追加の声明を提出するとともに、補充提出された出願書類内容が先の出願書類の写し(写しが外国語書類の場合、その中国語訳文)における位置を説明しなければならない。出願人は、出願書類の差し替え頁等の関連書類も併せて提出しなければならない。申請書において外国の優先権を主張する場合、元の受理機構が発行した先の出願書類の写しを提出するとともに、当該写しの中国語訳文を提出しなければならない。国内優先権を主張する場合、先の出願書類の写しを提出する必要はない。
2.中国の国内段階に移行するPCT出願
以前の実務では、中国は特許協力条約施行規則の引用規定を保留し、中国国家知識産権局は、国際出願が中国の国内段階に移行する際に、先の出願を引用することにより漏れた項目又は部分を追加し、元の国際出願日を維持することを認めなかった。
改正後の審査ガイドラインの規定により、中国国家知識産権局は、引用による追加の内容が存在する中国の国内段階に移行するPCT出願に対し、引用により内容を追加することを認め、元の国際出願日を維持する。即ち、国際段階において引用による追加項目又は部分が存在している国際出願(「項目」とは、全ての明細書又は全ての請求項であり、「部分」とは、一部の明細書、一部の請求項、又は、全て若しくは一部の図面である)に対し、中国の国内段階に移行する手続きを行う際に、出願人は、先の出願を引用することにより、漏れた項目又は部分を追加し、元の国際出願日を維持することができる。
3.引用による追加の適用除外
改正後の特許審査ガイドラインの規定により、次のいずれかの場合に、引用による追加の適用が除外される。
1)分割出願。
2)優先権の回復、優先権の追加と訂正があった。
3)引用により追加できる期間に遅れ、回復手続きによる権利の回復を請求することができない。
四、         特許権の期間の補償
202161日施行の特許法第42条の規定により、発明特許の期間は20年であり、実用新案の期間は10年であり、意匠の期間は15年であり、いずれも出願日から計算される。発明特許が、出願日から4年を経過し且つ実体審査の請求日から3年を経過した後に付与された場合、国務院特許行政部門は、特許権者の請求に応じて、発明特許が特許の権利付与の過程における不合理な遅延に対して、特許権の期間を補償しなければならない。ただし、特許庁に起因する合理的な遅延及び出願人に起因する不合理な遅延は除外される。
上記特許期間の補償の新制度の運用に伴い、改正後の施行規則及び審査ガイドラインにおいて、補償期間の計算におけるいわゆる合理的な遅延、不合理な遅延、及び具体的な計算方法が明確にされた。上記規定の要点を次にまとめる。
1.請求の提出
特許期間の補償の請求は、特許権者又は特許権者の依頼を受けた代理機構によって提出されなければならない。特許権者は、特許期間の補償を請求する場合、特許の公告日から3ヶ月以内に特許庁に請求し、関連料金を支払わなければならない。
2.補償期間の計算
特許期間の補償の請求が認められた場合、補償期間は、発明特許の権利付与の過程において、不合理に遅延された実際の日数に基づいて計算される。当該実際の日数とは、「発明特許の出願日から4年を経過し且つ実体審査の請求日から3年を経過した日から、特許権付与の公告日までの日数」から「合理的な遅延の日数及び出願人に起因する不合理な遅延の日数」を差し引いた日数である。
国際出願及び分割出願については、不合理な遅延の実際の日数とは、「国際出願が中国の国内段階に移行する日にち、又は分割出願の提出日から4年を経過し且つ実体審査の請求日から3年を経過した日から、特許権付与の公告日までの日数」から「合理的な遅延の日数及び出願人に起因する不合理な遅延の日数」を差し引いた日数である。
実体審査の請求日とは、出願人が特許法第35条第1項の規定に従って実体審査を請求し、特許法施行規則第113条の規定に従って発明特許出願の実体審査料金を全額支払った日である。発明特許出願の実体審査の請求日が特許法第34条に記載される公表日よりも早い場合、特許法第42条第2項に記載される「実体審査の請求日から3年を経過した」ことは、当該公表日から計算しなければならない。
3.特許の権利付与の過程における合理的な遅延
以下の状況に起因する遅延は、特許の権利付与の過程における合理的な遅延に該当する。
1)特許法施行規則第66条の規定に基づいた特許出願書類を補正する審査手続き、及び、
2)特許法施行規則第103条の規定に基づいた中止手続き、特許法施行規則第104条の規定に基づいた保護措置、行政訴訟手続き等のようなその他の合理的な状況。
4.出願人に起因する不合理な遅延
以下の状況は、「出願人に起因する不合理な遅延」に該当し、遅延の日数とは以下のとおりである。
1)指定期間内に特許庁が発行した通知に応答しなかったことに起因する遅延の場合、期間満了日から実際に応答が提出された日までを遅延の日数とする。
2)遅延審査を請求した場合、審査が実際に遅延した日数を遅延の日数とする。
3)引用による追加に起因する遅延の場合、特許法施行規則第45条に起因する遅延された日数を遅延の日数とする。
4)権利回復の請求に起因する遅延の場合、元の期間満了日から回復が認められた権利回復請求審査承認通知書の発行日までを遅延の日数とする。ただし、当該遅延が特許庁に起因するものと証明された場合は除外される。
5)優先日から30ヶ月以内に中国の国内段階に移行する手続きを行った国際出願に対し、出願人が早期の処理を要求しなかったことに起因する遅延の場合、中国の国内段階に移行する日から、優先日より30ヶ月を経過した日までを遅延の日数とする。
5.期間補償の請求の承認及び行政不服審査
1)審査
期間補償の請求に対し、審査した結果、特許権期間の補償の請求が期間補償の条件を満たしていないと認定した場合、特許庁は、少なくとも1回の意見陳述及び/又は書類補正の機会を出願人に与えるべきである。その後、依然として期間補償の条件を満たしていないものに対しては、期間補償を拒絶する旨の決定をしなければならない。審査した後、特許期間の補償の請求が期間補償の条件を満たしていると認定した場合、特許庁は、期間補償を承認する旨の決定をし、期間補償の日数を通知しなければならない。
2)行政不服審査
中国国家知識産権局20231221日の公告(第560号)により、特許法第42条第2項に従って提出された特許期間の補償の請求に対し、中国国家知識産権局の決定に対して不服がある場合、中国国家知識産権局に行政不服審査を申請することができる。
五、         新薬の特許権期間の補償
特許法第42条第1項の規定により、特許権の期間は20年である。特許法第42条第3項において、新薬の販売承認審査に要する時間を補償するために、中国で販売の承認を得た新薬関連の特許に対して、国務院特許行政部門は、特許権者の請求に応じて、特許権期間を補償しなければならないと規定された。補償期間は5年以下とし、新薬の市販が承認された後の合計有効特許権期間は14年以下とする。
上記特許法の規定により、医薬品特許の保護期間に対する補償制度の基本的な枠組が確立された。当該補償を獲得可能な医薬品及び特許の種類、請求条件、計算方法、保護範囲、承認手続き、救済手続き等については、施行規則及び審査ガイドラインにおいてさらに詳述される。
1.医薬品及び特許の種類
改正後の施行規則第80条の規定により、特許法第42条第3項に記載される「新薬関連の特許」は、規定を満たす新薬製品の特許、調製法の特許、医薬品使用の特許と指す。改正後の審査ガイドラインで、第五部分第9章第3.4節において医薬品の種類はさらに詳述された。具体的には、審査ガイドライン第五部分第9章第3.4節により、医薬品の種類は「国務院医薬品監督管理部門によって販売が承認された新薬及び次の規定を満たす改良型新薬」としてさらに明確にされた。
1)化学医薬品第2.1類のうち、既知な活性成分のエステル化による医薬品、又は、既知の活性成分の塩化による医薬品。
2)化学医薬品第2.4類、即ち、既知の活性成分を含有する新適応症の医薬品。
3)予防用生物学的製剤第2.2類のうち、ワクチン株・ウイルス種を改良したワクチン。
4)治療用生物学的製剤第2.2類に追加された新適応症の生物学的製剤。
5)漢方薬第2.3類、即ち、機能と適応症が追加された漢方薬。
2.補償を請求する条件
改正後の施行規則第81条の規定により、特許法第42条第3項の規定に従って新薬関連の特許権期間の補償を請求する場合、次の要求を満たし、当該新薬が中国において販売の承認を受けた日から3ヶ月以内に国務院特許行政部門に新薬関連の特許権期間の補償を請求しなければならない。
1)当該新薬に複数の特許が同時に存在する場合、特許権者は、そのうちの1つの特許のみについて特許権期間の補償を請求することができる。
21つの特許が同時に複数の新薬に関与する場合、そのうちの1つの新薬のみにより該特許について特許権期間補償を請求することができる。
3)当該特許が有効期間内にあり、且つ、新薬関連の発明の特許権期間の補償を受けたことがない。
審査ガイドライン第五部分第9章第3.1節には、上記3つの条件に基づいて、さらに次のように規定される。
1)補償を請求する特許は、登録日が医薬品の販売の承認申請が承認された日よりも早い。
2)補償請求が提出された時点で、当該特許権は有效状態にある。
3)補償を請求する特許は、販売の承認を受けた新薬関連の技術手段が請求項に含まれている。
3.補償期間の計算
改正後の施行規則第82条の規定により、特許法第423項の規定に従って特許権期間を補償する場合、特許法第42条第3項の規定を満たす前提で、補償期間は、当該特許出願日より当該新薬が中国において販売の承認を受けた日までの日数から、5年を差し引いた日数とする。
4.補償期間内の特許保護範囲
改正後の施行規則第83条の規定により、新薬関連の特許は、特許権期間の補償期間において、保護範囲が当該新薬及びその承認された適応症関連の技術手段に限られる。保護範囲において、特許権者の持つ権利と負う義務は特許権期間の補償前と同じである。
5.新薬特許権期間の補償請求の審査
改正後の審査ガイドライン第五部分第9章第3.7節の規定により、以下のとおりである。審査の結果、医薬品特許権期間の補償請求が期間補償条件を満たさない認定した場合、特許局は、少なくとも1回の意見陳述及び/又は書類補正の機会を請求人に与えるべきである。この後、依然として期間補償条件を満たさない請求に対して、期間補償を拒絶する旨の決定をしなければならない。
審査の結果、医薬品特許権の期間補償を認定した場合に、特許権者が特許権期間の補償請求を既にしているが、特許局が審査決定をしていない場合、審査官は、その特許権期間の補償請求の審査決定を待ち、決定がされてから医薬品特許権期間の補償日数を確定しなければならない。特許権者が特許権期間の補償請求をしておらず、且つ、特許公告日から3ヶ月以内である場合、特許権者が特許権期間の補償請求を放棄すると明言した場合を除き、審査官は、特許権期間の補償請求の期間が満了した時点まで待ち、その後に、医薬品特許権期間の補償日数を確定しなければならない。
審査の結果、医薬品特許権期間の補償請求が期間補償条件を満たすと認定した場合、特許局は、期間補償を与える旨の決定をし、期間の補償日数を通知しなければならない。
6.行政再審議
中国国家知識産権局20231221日の公告(第560号)により、特許法第42条第3項に従って提出された新薬の特許権期間の補償請求に関する中国国家知識産権局の決定に対して不服がある場合、中国国家知識産権局に行政再審議を申し立てることができる。
六、         医薬品特許紛争の早期解決システム
特許法第76条の規定により、医薬品の販売承認審査の過程において、医薬品の販売承認の申請人と関連特許権者又は利害関係者との間に、登録請求の医薬品関連の特許権について紛争が発生した場合、関連当事人は、登録請求の医薬品の関連技術手段が他人の医薬品特許権の保護範囲に入ったか否かについて判決を下すよう、人民法院に提訴することができる。国務院医薬品監督管理部門は、規定の期間内で、人民法院の有効判決に基づいて関連医薬品販売の承認を停止するか否かの決定をすることができる。
医薬品販売承認の申請人と関連特許権者又は利害関係者は、登録申請された医薬品に関連する特許権紛争について、国務院特許行政部門に行政裁決を請求することもできる。審査ガイドライン第四部分第3章第9節において、医薬品特許紛争に関する早期解決手続きに関与する無効審判請求事件に対する特別な審査規定がさらに導入された。
七、         信義誠実の原則
特許法改正後に確立された信義誠実の原則に応じて、改正後の施行規則は、次のように規定する。特許出願は、信義誠実の原則を遵守すべきであり、あらゆる特許、実用新案、意匠の出願の提出は、実際の発明創造活動に基づくべきであり、虚偽を弄してはならない。証拠又は十分な理由により、特許、実用新案、意匠の出願の過程において信義誠実の原則に反する事情が出願人に存在することが明した場合、出願に権利を付与してはならない。また、改正後の審査ガイドラインの規定により、審査官は、審査過程における拒絶理由であっても、無効審判手続きにおける無効理由であっても、職権により信義誠実の原則を審査に自発的に導入することができる。
復審査手続きにおいて、復審査請求の理由及び証拠の審査(審査ガイドライン第四部分第二章第4.1節)について、条項(1)特許法施行規則第十一条(信義誠実の原則条項)を満たしていない場合の規定が追加された。無効審判請求の合議審査について、合議体は、職権により審査を行うことができる状況として、「(1)特許権の取得が明らかに信義誠実の原則に反する場合、合議体は、特許法施行規則第十一条(信義誠実の原則条項)における無効理由を導入して審査を行うことができる。」が追加された。
八、         オープンライセンス
2021年改正により、特許法(第50から51条)に、オープンライセンス制度に係る条文が追加された。当該制度の要点を次にまとめる。
1)特許権者が自発的に国務院特許行政部門に対し、あらゆる機構又は個人による特許の実施を許可する意思を書面により声明し、ライセンス使用料金の支払手段と基準を明確にした場合、国務院特許行政部門は、オープンライセンス声明を公告するものとする。
2)特許権者が実用新案特許、意匠特許について、オープンライセンス声明を行う場合、特許権の評価報告書を提出しなければならない。
3)特許権者は、オープンライセンス声明を撤回することができ、国務院特許行政部門はそれを公告する。オープンライセンス声明の撤回が公告された場合も、それ以前に付与されたオープンライセンスの有効性には影響しない。
4)あらゆる機構又は個人がオープンライセンスの特許を実施することを希望する場合、特許権者に書面による通知をし、公告されたライセンス使用料金の支払手段と基準に従って、ライセンス使用料金を支払ったときに、特許実施ライセンスを取得することができる。
5)特許権者は、オープンライセンスの実施期間において、相応の特許年金の減額又は免除を受ける。
6)オープンライセンスを実施する特許権者は、ライセンス使用料金について、ライセンシーと協議した上で通常ライセンスを付与することができるが、当該特許について独占的又は排他的なライセンスを付与してはならない。
改正後の特許法施行規則(Rule 85からRule 88)は、オープンライセンス制度について次のように詳しく規定している。
1)特許権者が自身の特許に対して、オープンライセンスを実施することを自発的に声明しようとする場合は、特許権付与の公告後に行わなければならない。オープンライセンス声明の内容は、正確かつ明瞭でなければならず、商業的宣伝用語を用いてはならない。
2)特許権に、次のいずれかの状況がある場合、特許権者は、それに対してオープンライセンスを実施することはできない。
a)特許権が独占的又は排他的なライセンス有効期間内にある場合
b)規則第103条、第104条に規定される、中止に該当する場合
c)規定に従わず、年金を支払わなかった場合
d)質権者の同意を得ずに、特許権が担保設定された場合
e)他の特許権の有効実施を妨げた場合
3)オープンライセンスにより、特許実施ライセンスを得た場合、特許権者又はライセンシーは、ライセンスを得たことを証明できる書類をもって、国務院特許行政部門に登録しなければならない。
4)特許権者が虚偽の材料を提出すること、若しくは事実を隠蔽すること等により、オープンライセンスを声明してはならず、又はオープンライセンスの実施期間において特許年金の減額又は免除を受けてはならない。この規定に違反した出願人又は特許権者は、県級以上の特許法執行担当部門から警告を受け、10万元以下の罰金に処される可能である。
改正後の審査ガイドラインでは、特許オープンライセンスが自発の原則、合法の原則及び公開の原則を遵守しなければならないことがさらに明確に規定された。特許オープンライセンス声明の提出、撤回、登録、公告及び発効、並びにオープンライセンスの実施契約の登録、オープンライセンスの実施期間の料金減額手続き、及びオープンライセンス実行中の特許の関連手続きについてさらに規定された。
九、         部分意匠、意匠の国内優先権
1.部分意匠
特許法の改正に伴い、改正後の施行規則は、新たに設立した部分意匠登録出願制度に対して、次の規定を明確にした。
1)出願人は、製品全体の図面を提出し、点線と実線の組合せ又は他の方法により、保護を請求する部分の内容を表明しなければならない。
2)出願人は、製品全体の図面において既に点線と実線の組合せにより表明された場合を除き、簡潔な説明により保護を請求する部分を明記しなければならない。
なお、セットとなる製品における各意匠は、製品全体の意匠であり、製品の部分意匠であってはならない。
改正後の審査ガイドラインでは、部分意匠の定義及び関連の書類要求がさらに明確にされた。元の出願が製品全体の意匠である場合、その一部を分割出願として提出してはならないことが規定された。また、元の出願が製品の部分意匠である場合、その全体又は他の部分の意匠を分割出願として提出してはならないことが規定された。改正後の審査ガイドラインでは、さらに次のように規定された。出願人が、2ヶ月自発的補正期間を超えた後、又は、審査意見通知書への回答時に次の補正をした場合、補正内容が元の図面又は写真で示す範囲を超えていなくても、元の出願書類に存在した欠陥の解消、又は、通知書で指摘された欠陥に対する補正としてみなすことができないため、受け入れることができない。
1)全体意匠を部分意匠へと補正する。
2)部分意匠を全体意匠へと補正する。
3)同一の製品全体における部分意匠を別の部分意匠へと補正する。
2.意匠の国内優先権
特許法の改正に伴い、改正後の施行規則では、新たに設立した意匠の国内優先権制度について、発明、実用新案及び意匠のいずれも意匠出願の優先権の基礎とすることができることが明確にされた。また、意匠の国内優先権の基礎としての先行出願も意匠出願である場合、該先行出願が、後の出願の提出日から取り下げと見なされ、意匠の国内優先権の基礎としての先行出願が発明又は実用新案出願である場合、取り下げと見なされないことが規定された。
十、         ハーグ協定に基づく意匠の国際出願
2020年の特許法改正時、登録意匠の保護期間を10年から15年に改正し、中国の『工業意匠の国際登録に関するハーグ協定』への加盟のための準備を整えた。202225日、中国は、『工業意匠の国際登録に関するハーグ協定のジュネーブ改正協定(1999年)』(下称『ハーグ協定』)への加盟書を世界知的所有権機関に提出した。『ハーグ協定』は、その3ヶ月後、即ち、202255日に中国で発効した。したがって、202255日から、多くの中国出願人は、『ハーグ協定』に基づいて国際事務局又は中国国家知識産権局(を通じて国際事務局)に意匠の国際出願を提出するようになり、同時に、多くの外国出願人は、中国において意匠保護を得るために、『ハーグ協定』に基づく意匠の国際出願において中国を指定するようになった。
それに伴い、今回の特許法施行規則に新たな章(即ち、第十二章:意匠の国際出願に関する特別規定:第136144条)が追加された。また、今回の特許審査ガイドラインに新たな部分(即ち、第六部分:意匠の国際出願、第一章:意匠の国際登録出願の事務処理と、第二章:意匠の国際出願の審査とを含む)が追加され、出願人が中国国家知識産権局を通じて意匠の国際登録出願を提出する際の関連要求、及び、中国を指定した意匠の国際登録出願に対する中国国家知識産権局による審査の関連事項が具体的に規定された。
十一、      審査遅延請求
改正後の施行規則第56条の規定により、出願人は特許出願に対して審査遅延請求を提出することができる。また、改正後の審査ガイドラインで、3種類の特許出願のいずれも審査遅延を請求できることがさらに規定された。
1)発明特許出願の審査遅延請求は、出願人が実体審査請求を提出すると同時に提出しなければならないが、発明特許出願の審査遅延請求は、実体審査請求の発効日から発効する。遅延期間は、審査遅延請求の発効日から1年、2年又は3年とする。
2)実用新案登録出願の審査遅延請求は、出願人が実用新案登録出願をすると同時に提出しなければならない。遅延期間は、審査遅延請求の発効日から1年とする。
3)意匠登録出願の審査遅延請求は、出願人が意匠登録出願をすると同時に提出しなければならない。遅延期間は月単位とし、最長遅延期間は審査遅延請求の発効日から36月とする。
遅延期間を経過した後、特許出願は順に審査される。必要に応じて、特許庁は、自発的に審査手続きを開始して、それを出願人に通知し、出願人が請求した審査遅延期間は終了する。遅延期間において、出願人は審査遅延請求の撤回を請求することができ、規定を満たす場合は、遅延期間を終了し、特許出願は順に審査される。
十二、      送達日の確定
施行規則の改正により、電子発送に関する重要な規定が設けられ、15日間の郵送期間が取り消された。施行規則第4条の規定により、2024120日をもって、中国国家知識産権局から出願人、特許権者、無効審判請求人等に電子形式で送達される通知書及び書類は、15日間の郵送期間の猶予が取り消された。中国国家知識産権局から電子形式で送達される各種書類は、当事者によって承認された電子システムに入った日付を送達日とする。
上記改正に伴い、改正後の審査ガイドラインが次のように規定された。当事者によって承認された電子システムに入った日付と通知書及び決定の発行日とが一致しない場合、当事者が証拠を提出できる場合を除き、該通知書及び決定の発行日を送達日と推定する。ただし、「当事者によって承認された電子システムに入った日付」の判断方法は不明であり、中国国家知識産権局が後に公表する具体的な説明を待たなければならない。
十三、      発明者の追加と訂正の時期
改正後の特許審査ガイドラインにより、出願時に発明者の誤記入又は記入漏れにより、出願後に発明者の追加若しくは減少、又は訂正が必要となる時期について、次のように厳格に規定された。
発明者の誤記入又は記入漏れにより、訂正請求をする場合、出願人は、受理通知書の受領日から1ヶ月以内に提出し、訂正理由を明記した、出願人(又は特許権者)の全員と変更前後の発明者全員の署名又は押印のある証明書類を同時に提出すべきであり、さらに、特許法施行規則第14条の規定に従い、変更後の発明者が本発明創造の実質的な特徴に対して創造的な貢献をした全員であることを既に確認したことを声明しなければならない。
十四、      特許法又は施行規則の主な改正に関与しない審査ガイドラインの改正
1.復審と無効審判の職権に基づく審査
復審請求の理由と証拠の審査について、改正後の審査ガイドラインには、「拒絶査定で指摘された欠陥と同じ性質の欠陥」及び「拒絶査定で指摘されていない他の明らかな実質的欠陥」の2つの場合の具体例が追加され、合議体が「拒絶査定で指摘された欠陥に関連する証拠」の使用を適宜調整できることが明確に規定された。例えば、拒絶査定の根拠となった証拠に基づいて、最も近い従来技術の変更、又はそのうちのいずれかの証拠の省略が可能である。また、合議体は、出願の属する技術の分野における公知の知識を導入し、又は相応の技術辞書、技術マニュアル、教科書等、出願の属する技術の分野における公知の知識に当たる証拠を補充することができる。
無効審判請求の合議審査の範囲について、改正後の審査ガイドラインには、次のように明確に規定された。合議体は必要に応じて、特許権に存在する、特許法及び同法施行規則の関連規定に明らかに違反する他の状況を審査することができるが、特許有効性を全体的に審査する義務はない。合議体は出願の具体的な状況に応じて、口頭、書面又は口頭と書面の組合せによって審査することができる。また、口頭審理は、オフライン審理、オンライン審理、及びオフラインとオンライン審理の組合せ等によることができる。
改正後の審査ガイドラインにより、無効審判手続き又は復審手続きにおける口頭審理通知書に指定される返答期間は、一般的に7日を超えないものとする。無効審判手続きにおいて、特許権者は、無効審判理由、又は合議体によって指摘された欠陥について、特許書類を補正しなければならない。
域外証拠について、改正後の審査ガイドラインでは、「域外証拠とは、中華人民共和国の領域外で形成された証拠であり、それが所在する国の公証機関によって認証された証拠、又は中華人民共和国と該所在国の間で締結した関連条約に規定された認証手続きを履行した証拠でなければならない」との文言が削除された。改正後の審査ガイドラインでは、当事者が無効審判手続きにおいて関連の認証手続きを行う必要がない場合、つまり(3)人民法院の判決、行政機関の決定、又は仲裁機構の裁定によって有効であることが確認された証拠である場合が追加された。
2.遺伝資源の発明
改正後の審査ガイドライン第二部分第一章第3.2節に、次の内容が追加された。(1)特許法でいう遺伝資源とは、人体、動物、植物又は微生物等に由来し、遺伝機能単位を有し、実際に、又は潜在的に価値がある材料により生成された遺伝情報を含む。(2)発明創造が遺伝資源の遺伝機能を利用することは、発明創造を完成させるために、遺伝機能単位により生成される遺伝情報に対する分析及び利用することを含む。また、同節には、さらに次のように規定された。『中華人民共和国生物安全法』及び『中華人民共和国人類遺伝資源管理条例』の規定により、国内の人類遺伝資源情報を外国組織に提供するか、又は使用させる場合、国務院科学技術行政部門に事前に報告し、情報のバックアップを提供しなければならない。また、国内の公衆衛生、国家安全及び社会的公共利益に影響を与える懸念がある場合、さらに安全審査を通過しなければならない。発明創造が関連手続きを履行せずに、国内の人類遺伝資源情報を外国組織に提供することにより完成した場合、該発明創造に特許権を付与してはならない。
3.診断方法の発明
医療技術の発展に伴い、審査ガイドラインにおける、疾患に対する診断及び治療方法の判断基準が改正された。
医療分野、特にスマート医療等の新分野において、コンピュータ等の情報処理能力を有する装置は、診断に関する情報処理方法の実施により一層幅広く用いられるようになった。創造主体のこの種類の発明創造に対する保護の必要に応じて、改正後の審査ガイドライン第二部分第一章第4.3.1.2節では、診断方法に該当しない例として、「全てのステップがコンピュータ等の装置により実施される情報処理方法」が挙げられた。
4.漢方薬分野の特許
中医薬学のイノベーションに対する指導と保護をさらに強化するために、改正後の審査ガイドライン第二部分では、第11章「漢方薬分野の特許出願の審査に関する幾つかの規定」が追加され、6節が含まれる。主な内容を次にまとめる。
1)漢方薬の特許の保護対象:特許権を付与できる漢方薬の特許の保護対象、及び、特許権を付与できない種類を明確にした。
2)明細書及び特許請求の範囲:「明細書の十分な開示」及び「特許請求の範囲の明白性と裏付」の審査ガイドラインに関し、事例を挙げて説明した。
3)新規性:「漢方薬組成物の成分の用量と配合率」及び「漢方薬の製薬使用が関与する病と症」の2つの部分を含む。新規性を判断する場合、古伝の処方剤における用量単位の換算、並びに、中医薬学の病と症及びそれと西洋医学の疾患又は薬物作用メカニズムとの間の関係への留意を促した。
4)進歩性:漢方薬組成物の発明の進歩性審査について、主に審査原則及び方法を示した。進歩性の判断は、漢方薬の発明創造の特徴を捉えなければならないことを強調した。漢方薬組成物の発明を、「固有の処方剤の加減の発明」と「自作の処方剤の発明」という2大分類に分け、さらに、「固有の処方剤の加減の発明」の種類を細分し、それぞれ進歩性の判断原則及び方法を示し、肯定的事例と否定的事例を挙げて説明した。
5)実用性:「医者による処方」及び「動物体から漢方薬原料を取得する方法」に関連する発明は、産業上利用できないため、実用性がないことを明確にした。
十五、      図面
審査ガイドライン第一部分第二章第7.3節における、明細書の図面に対する要求が改正された。図面は一般的に黒インクで描かれるが、特許出願の関連技術内容を明確に説明するために、必要に応じてカラー図面を提出することもできるように規定された。
 
特許法施行規則及び特許審査ガイドラインの改正及び公布施行により、特許出願人は202161日に施行された改正特許法の施行方法についての完全な方向性指導を受けられるようになったが、一部の新制度の具体的な施行詳細及び審査ガイドラインをより明確に把握するには、2024120日に施行された施行規則及び特許審査ガイドラインの改正内容に基づく。弊所は引き続き情報収集に努め、適時クライアントと共有する。
ご質問、お気づきの点、ご要望などございましたら、お気軽に弊所弁理士の林宗宏chlin@leeandli.comまでお問い合わせ頂ければ幸いです。

 

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