ニューズレター
技術分野の判断
知的財産及び商業裁判所113年(西暦2024年)度行専訴字第6号判決(以下「第1判決」という)、知的財産及び商業裁判所112年(西暦2023年)度民専上字第14号民事判決(以下「第2判決」という)
専利(特許、実用新案、意匠を含む)紛争事件において、専利の技術分野の判断は極めて重要な役割を果たしている。なぜなら、係争専利の有効性を争うために、複数の引用文献を合理的に組み合わせることができるかどうかを判断することができるからである。以下では、専利の技術分野の判断に関する2つの判決について説明する。
第1判決における2つの引用文献は2つの異なる製品に関するものであり、構造的には類似しているものの、そこに開示された機能性を詳細に検討した結果、知的財産及び商業裁判所(以下「IPCC」という)は2つの引用文献が異なる技術分野に属すると判断した。第2判決における4つの引用文献は4つの異なる製品に関するものであるが、いずれもスライドレール技術を用いて積載物を水平方向に往復運動させるものであるため、IPCCは、4つの引用文献が同じ技術分野に属すると判断した。
第1判決は、IPCC 113年(西暦2024年)度行専訴字第6号判決であり、係争実用新案は実用新案登録第M600970号「ソーラーパネル支柱の補強構造」である。原告(無効審判請求人)は、2つの引用文献に基づいて、係争実用新案の請求項1に記載されたソーラーパネル支柱の補強構造は、進歩性がないと主張した。原告が提出した1つ目の引用文献は係争実用新案と同じソーラーパネル支柱の技術分野に属し、2つ目の引用文献はアルミ押出サッシに関するものである。IPCCは、原告が提出した2つの引用文献を分析した。原告は、1つ目及び2つ目の引用文献の開示内容を組み合わせることにより、係争実用新案請求項1の全ての技術的特徴が開示されていると主張したが、IPCCは、1つ目及び2つ目の引用文献は同じ技術分野ではないと判断した。
詳しく言うと、IPCCは、1つ目と2つ目の引用文献との間に解決しようとする課題に共通性がないと指摘した。同裁判所は、2つ目の引用文献に開示されたアルミ押出サッシは、その「翼状係止片」の外形が係争実用新案請求項1に記載された「補強リブ」と類似しているものの、その機能は雨水が室内に逆浸入するのを防止することであり、支柱の支持効果を強化するための係争実用新案の「補強リブ」の機能とは明らかに異なると判断した。これに基づき、IPCCは、1つ目と2つ目の引用文献の組み合わせが係争実用新案請求項1に進歩性がないことを証明するには不十分であると判断した。
第2判決は、IPCC 112年(西暦2023年)度民専上字第14号民事判決であり、係争特許は特許第I273372号「スライド式フラットパネルディスプレイ及びキーボードモジュール」である。被控訴人が、4つの引用文献に基づいて係争特許の無効を主張したのに対し、控訴人(特許権者)は、4つの引用文献は、係争特許が属する技術分野における従来技術ではない旨の抗弁を提出した。詳しく言うと、控訴人は、4つの引用文献の技術分野はそれぞれ「引き出しの底部に適用されるロックシステム」、「食器洗浄機(食器洗い機)に適用されるスライドレールの取付構造」、「天井クレーンと組み合わせて重量物を運搬するスチールフレームのハンドル構造」、「バッテリー搭載に適したキャビネット構造」に属し、係争特許の技術分野である「ラックマウント型パソコン切替器におけるスライド式フラットパネルディスプレイ及びキーボードモジュール」とは全く異なると主張した。
上記4つの引用文献を分析した結果、IPCCは、「乙1~4号証は、いずれもスライドレール技術の応用に係るものであって技術分野の関連性を有し、かつ、積載物を水平方向に往復運動させるための機能、作用の共通性を有するものである」とした上で、「乙1~4号証は、スライドレールを応用する原理及び機構が全て同じであり、関連する技術分野に属し、係争特許の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、それを参酌する合理的な動機づけがあるはずであり、したがって、係争特許の従来技術としての適格性がある」と結論づけた。
上記2つの判決から分かるように、IPCCによる専利の技術分野の判断は、その技術が適用される物、原理、機構又は作用などを考慮し、専利が属する具体的な技術分野に基づいて行われる。