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専利権の帰属に関する民事の訴えの類型



現行台湾専利法(専利:特許、実用新案、意匠を含む)第35条及び第71条第1項第3号によれば、専利権者が専利出願権者でない場合、実際の専利権者は、当該専利出願の公告後2年以内に無効審判を請求することができ、無効審判の無効(請求成立)審決が確定した後の2か月以内に同一の発明又は創作につき専利出願をした場合、無効審決が確定した当該専利権の出願日をその出願日とする。しかし、最高行政裁判所の89年(西暦2000年)度判字第1752号判決及び202339日に行政院(日本の内閣に相当)で閣議決定された専利法改正草案の説明にあるように、実務上、経済部智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)は、事実認定と証拠調べが困難なため、その真の権利者を判断できないことが多い。そのため、現在でも民事訴訟によって解決される案件が大半である。
 
しかし、実際の専利権者が専利権移転登録請求訴訟を提起すべきか、専利権の帰属の確認訴訟を提起すべきか、専利出願権の帰属の確認訴訟を提起すべきかについて、裁判所はこれまで異なる見解を示してきた。例えば、司法院(台湾の最高司法機関)の102年(西暦2013年)度「知的財産法律座談会」「民事訴訟類関連議題」提案及び検討結果第2号では、専利権が専利権移転登録手続請求訴訟を提起できるとされ、司法院101年(西暦2012年)度「知的財産法律座談会」「民事訴訟類関連議題」提案及び検討結果第5号では、否定的見解が示された。知的財産及び商業裁判所(以下「IPCC」という)の最近の2つの判決は、いずれも専利出願権の帰属の確認訴訟を請求するしかないとした。
 
IPCCは、2024320日付の112年(西暦2023年)度民専訴字第40号判決において以下の見解を示した。専利出願権者は発明者又は考案者であり、いわゆる「発明者」とは、実際に発明をなした者を指し、「考案者」とは、実際に実用新案を考案した者を指す。発明者又は考案者のいずれも専利請求の範囲に記載された技術的特徴に実質的に貢献した者でなければならない。両者は、発明又は実用新案が解決しようとする課題又は達成しようとする効果に対して着想を練り、さらにその着想を実現するための具体的な技術手段を提案しなければならない。また、専利権の帰属をめぐる一般的な紛争類型には、他人の創作の剽窃(盗用)、専利権帰属の契約違反などがある。紛争類型によって証明すべき事実は異なる。しかし、証明すべき共通の事実としては、主張者(真の発明者/考案者であると主張する者)が主張する創作が係争専利と実質的に同一であるかどうかが挙げられる。「実質的に同一」とは、文字記載や表現の形式的なものに限定されるべきではなく、その属する技術分野における通常の知識を有する者が、両者が同一の事項を述べていると判断できる場合、あるいは、その相違が、技術的課題を解決し、又は効果を達成するための主張者の技術的手段の内容から逸脱していない場合、やはり「実質的に同一」とみなすべきである。それには、新規性、新規性の擬制喪失(拡大先願)の態様のほか、一般的に使用されている技術や周知技術の使用、又は通常の技能の選択に基づき、課題を解決するための技術的手段や効果を奏するための技術的手段に実質的な影響を与えない状況も含まれるが、進歩性の態様は含まれない。また、実質的同一性の有無を判断する際には、主張者の所有する技術内容と、係争専利の専利請求の範囲に記載された技術との一致点・相違点を請求項ごとに慎重に検討し、判断する必要がある。
 
その後、IPCCは、上記の基準に従って、主張者が各請求項に対して実質的な貢献をしているかどうかを判断し、最終的に、主張者が一部の技術的特徴に対してのみ実質的な貢献をしたことを確認したため、主張者は被告と専利出願権を共有すべきであり、当該専利出願権は両当事者に共有されるものと判断した。しかし、「専利権者の帰属の確認」及び「当該専利の移転登録」などの請求について、IPCCは、最高裁判所109年(西暦2020年)度台上字第2155号民事判決の趣旨を引用し、当該専利は、被告が智慧局に出願し、特許査定を経て専利権を取得したもので、原告は智慧局から法に基づき専利権の付与を公告されておらず、係争専利権をまだ取得していないため、専利権者としての確認を求めることも、移転登録手続を求めることもできないと判示した。
 
同様の見解は、IPCC202458日付112年(西暦2023年)度民専訴字第26号判決にも見受けられ、同判決は、係争意匠の意匠登録出願権者は主張者であることを確認したが、最高裁判所109年(西暦2020年)度台上字第2155号民事判決の趣旨も引用し、原告は、智慧局から法に基づき意匠権の付与を公告されておらず、係争意匠権をまだ取得していないため、意匠権者としての確認を求めることも、登録移転手続を求めることもできないと判示した。
 

IPCCの上記2つの判決は、主張者が請求できるのは専利出願権の帰属確認のみであると判断したが、専利権の帰属又は移転登録などの争いについては判断を示していなかった。しかし、専利審査基準第一篇第11章と第19章は、それぞれ、「専利出願権の帰属に争いがあり、調停、仲裁又は裁判の手続により専利出願権者を確定した場合」、「専利権の帰属に争いがあり、調停、仲裁又は裁判の手続により専利権者を確定した場合」、いずれも関連証明書類を添付して、移転登録手続により権利者の名義変更を申請することができる旨規定している。つまり、智慧局は、専利権の帰属を確認する方法により専利権者の名義を変更できると考えているようである。このような見解は、専利権の帰属の争いについて判断を示していない上記判決とは異なるように思われる。今後の実務の展開が注目される。 

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