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最高行政裁判所、予期せぬ効果を参酌して進歩性を肯定



特許の進歩性の判断について、「発明が予期せぬ効果を奏する」ことは、特許審査基準に定められた進歩性を肯定する補助的判断要素の1つである。その理由は、発明が関連する従来技術と比べて予期せぬ効果を奏する場合、その予期せぬ効果は、その発明が決して容易に完成できないことを証明するものであり、進歩性を判断する上で有力な事情と見なされるからである。

 
現行の「進歩性」に関する特許審査基準によれば、「いわゆる『予期せぬ効果』とは、特許出願に係る発明が、関連する従来技術と比べて予期せぬ効果を奏することを指し、これには、効果に顕著な向上を生じた(量的変化)又は新しい効果を生じた(質的変化)ことが含まれ、それらが当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という)にとって、その発明の出願時に予期することのできないものを指す。」とされている。
 
しかし、これまでの実務では、特許権は「発明が予期せぬ効果を奏する」ことをもって特許が進歩性を有するという主張を裏付けたが、裁判所はその立証ができないと判断したことが多く、このような補助的判断要素を採用することはほとんどなかった。採用しなかった1例が、知的財産及び商業裁判所(以下「IPCC」という)による2022112日付110年(西暦2021年)度行専訴字第24号行政判決である。この判決において、原告は、単に、係争出願に記載の実施例、表1などの資料に依拠して、係争出願に係る発明が、当業者が予期せぬ効果の顕著な向上を達成したものであると主張した。しかし、原告は、当業者の効果量やレベルに対する一般的な期待値などの資料を提供しておらず、また、係争出願の明細書の表1の記載内容に対する主張を裏付ける関連資料も提供していなかった。したがって、裁判所は原告の上記主張を採用できないと判断し、係争出願の上記実施例、表1に記載の効果は、請求項に特定された発明によって達成可能であると認めることは困難であり、係争出願の発明が関連する従来技術と比べて予期せぬ効果を奏したことを証明する証拠はないと考え、最終的に、係争特許は進歩性を有さないと結論付けた。
 
しかし、最高行政裁判所は、最近の2024229日付111年(西暦2022年)度上字第920号判決において、この補助的判断要素に関する当事者の主張を認め、係争特許の進歩性を認めた。
 
本事件では、係争特許は液晶組成物及びそれを用いた液晶表示素子を提供するものである。裁判所は、進歩性の判断において、係争特許明細書には、ある特定の効果を具体的に記載しており、その特定の液晶組成物によって奏される特定の効果の評価を、異なる構成成分による複数の実施例/比較例などを用いて説明している。一方、無効審判の証拠はいずれも、その組成物が同時に当該特定の効果を奏することができることを明らかにしていないと認めた。したがって、同裁判所は、係争特許には予期せぬ効果があり、その請求項に特定された発明は、当業者が容易に完成できるものではなく、進歩性を有すると判断した。
 

以上から、上記最高行政裁判所の見解によれば、特許明細書にある特定の効果が具体的に記載され、その発明によって奏される特定の効果の評価を、複数の実施例/比較例などを用いて説明することは、その発明が予期せぬ効果を奏することを主張する上で役立つことになると思われる。

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