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著作権侵害への対応 生成AIをめぐる各国の規制動向


Audrey Liao/Cindy Lu

一、前言

 
人工知能(Artificial Intelligence、以下「AI」という)技術の発展が国際的な潮流となるにつれ、関連法整備の必要性も日増しに高まっている。AIの学習プロセスで必要とされる既存の著作物の数は膨大であるため、AIツールの開発者が著作権者から個別に許諾を得ることは困難である。他人の著作権を侵害しないよう、AIのトレーニングに既存の著作物の利用を控えると、AI技術の発展を阻害し、社会全体の福祉にも不利となる可能性がある。そのため、各国は相次いで著作権法上の既存のフェア・ユースの抗弁を見直してきたが、ほとんどの国では、AIトレーニングにおける既存の著作物の大量複製に適用される法律が整備されていない。
 
二、AIをめぐる台湾の規制動向
 
台湾では当初、行政院(内閣に相当)が20239月にAI基本法草案を提出する予定であったが、生成AI導入という産業界の新たな発展を考慮し、草案の提出時期を2024年に延期した。現在、行政院が公表した「行政院及び所属機関(機構)による生成AIの利用に関するガイドライン」により、各省庁/機関が策定した自主規制ガイドラインが優先して適用される。しかし、2019以降に立法委員(国会議員に相当)が提出した様々な草案と、過去数年間に行政院国家科学委員会によって提供されてきた法案の説明を見ると、台湾のAI基本法草案は、AI という新興技術を規制するための倫理原則、国家政策、プライバシーと個人情報の保護、規制のサンドボックス(新技術等実証制度)、カウンセリングメカニズムなどに重点を置いているが、著作権に関する規制はまだ見られない。
 
そのため、既存の著作物を利用して台湾のAI 技術を強化したいという業界の要望にどのように対処するか、フェア・ユースの範囲はどこまでなのか、法定許諾制度によって著作権者の許諾を得ることができるのか、といった問題には、まだ明確な回答が得られていない。
 
三、AIをめぐる世界各国の規制動向
 
日本は、著作権法において、一定の条件の下で、データ分析や機械学習を目的とした著作物の利用を、いずれの方法によるかを問わず、明示的に認めている。シンガポールも、著作権法において、機械学習などのコンピュータデータ分析を目的として、利用者が合法的にアクセス可能著作物を複製し(make a copy)、伝達する(communicate)ことができる旨の規定を新設している。
 
202312月に欧州議会とEU(欧州連合)理事会が、AIを包括的に規制する世界初の法令であるEU AI法(Artificial Intelligence Act;以下「AI法」という)について暫定的な政治合意に達したことで、世界各国のAI規制策定の基準が徐々に明確になりつつある。当初のAI法にも著作権関連の規制はなかったが、生成AIの導入により、著作権者とAIモデル開発者の間の緊張関係が徐々に表面化してきた。そのため、AI法の改正では、産業の発展と著作権者の利益のバランスをとるために、利用された著作物の完全なリストとその出典を開示するという透明化義務(transparency obligations)を開発者に課す透明性条項が盛り込まれた。
 
四、まとめ
 

AIという新興技術の台頭を受けて、また、インターネット上でのAI技術の応用が広範囲に及ぶことから、各国がこれに関連する規制を定める必要がある。日本やシンガポールの改正著作権法に著作権侵害の例外規定が新設され、米国では関連著作権侵害訴訟が勃発し、世界初のAI法である「EU AI法」の形成が進むにつれ、AIによる他人の著作物の利用に関する国際的なフェア・ユースの判断基準がますます明確になっていくだろう。業界にとって、AI開発者は、新技術を開発・改良しながら、著作権侵害のリスクを軽減するために、各国の法制度の発展と規律密度に引き続き注意を払い、それに応じて技術内容とライセンス手続を調整する必要がある。

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