ニューズレター
最高行政裁判所112年度上字第20号判決―商標権者は、訴願及び行政訴訟の段階においても商標の使用証拠を提出できると判示
2021年5月5日、上告人は商標登録第01052077号「Genesis及び図」商標について、商標法第63条第1項第2号に規定する事情に該当するとして、その登録の廃止(取消)審判を請求した。経済部智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)は被上告人に対し、法に基づいて答弁するよう通知したが、被上告人は期間を過ぎても答弁しなかったため、智慧局は当該商標の登録を取り消すべき旨の処分を下し、その後の訴願決定でも智慧局の処分が認められた。被上告人はこの決定を不服とし、行政訴訟を提起した。原審である知的財産及び商業裁判所は、被上告人勝訴の判決(原判決)を下した後、これを不服とした上告人は最高行政裁判所に本件を上告した。最高行政裁判所の主な見解は以下のとおり。
一、 商標主務官庁は、取消処分を下す前に、他人による登録取消審判請求があった旨を商標権者に通知し、相当の期間を指定して、答弁書を提出する機会を与えなければならない(商標法第65条第1項規定を参照)。これは、商標登録の取消は、その性質上、人民の権利を制限又は剥奪する行政処分であるため、このような権益を侵害する行政処分を下す前に、商標主務官庁は、適正な法的手続に則り、行政処分を受ける当事者に意見陳述及び答弁の機会を与えるべきである。商標法第65条第2項は、「第63条第1項第2号に規定する事情に該当し、その答弁通知が送達されたとき、商標権者はその使用の事実を証明しなければならない。期間内に答弁しなかった場合は、その登録を直接取り消すことができる。」と規定している。これは、商標が実際に使用されているかどうかについては、商標権者だけが最もよく知っているため、使用の積極的な事実を立証する責任は商標権者にあるからである。しかし、商標権者が商標の不使用のため答弁を提出しない場合、商標主務官庁は事件を審理するための積極証拠がなく、取消手続きを進めることが困難になるため、商標主務官庁に、このような状況下において、職権で調査をすることなく直接商標登録を取り消す権限を付与している。
商標法第65条第1項及び第2項の立法目的は、商標権者の手続上の利益を保障し、商標権者に立証責任を負わせ、商標主務官庁に職権調査が必要とされないことを認めることにあるから、商標権者が証拠を提出する時間を制限するものではない。
二、 また、商標法第63条第1項第2号の立法目的の観点からは、商標の機能と価値を十分に発揮させるために、商標権者が商標登録後に実際に商標を使用することを確保することにある。したがって、商標権者が取消審判請求前の3年以内に商標使用の事実を証明する証拠を提出できれば、同号はその商標には適用されず、その登録は取り消されるべきではない。商標権者が取消の段階で答弁を提出しなかったという理由だけで、権利喪失の効果が生じるのであれば、商標権者の権利を不当に剥奪し、公正な取引秩序に影響を及ぼすことになり、同号の立法目的に反する。したがって、商標権者が取消の段階で、指定の期間内に答弁せず、商標主務官庁が商標法第65条第2項の規定によりその登録を直接取り消した場合でも、商標権者は訴願、行政訴訟の段階において使用の事実を証明する証拠を提出することができる。提出された証拠が商標取消事由がないこと、すなわち「同法第63条第1項第2号に規定する事情はない」ことを証明するのに十分である場合、商標主務官庁が、商標法第65条第2項の規定により商標登録を取り消すことは違法である。原審は、被上告人が取消審判請求前の3年以内に係争商標を係争商品に使用したかどうかを判断するために、依然としてその提出した証拠を斟酌することができるとした。そのような認定に誤りはない。
以上をまとめると、原判決には、上告人の主張するような法令違反はなく、法令違反があるとして原判決の破棄を求める上告人の上告趣旨は理由がなく、棄却されるべきである。