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商標の著名性は商標権侵害の刑事責任の成立に影響するか



台湾商標法は、商標権者の同意を得ずに、同一又は類似の商品又は役務に、登録商標と同一又は類似の商標を使用し、関連する消費者に誤認・混同を生じさせるそれがある場合、並びに他人がなした前述の商品を販売、又は販売の意図をもって所持、陳列、輸出又は輸入した場合、民事上の侵害責任に加えて、商標法第95条第1項及び第97条の刑事責任も構成すると規定している。刑事責任については、過失行為を処罰する規定がないため、故意侵害の場合にのみ犯罪が成立する。20231124日、台湾台中地方裁判所は、商標権侵害の刑事責任の成否について、商標の著名性で「商標の使用」及び「故意」などの要件を満たすかどうかを判断するとの見解を示した。

 
本件で検察官が起訴した事実関係は以下のとおりである。被告は、商標権者の同意を得ず、係争商標を含む図形(以下「係争図形」という)を無断で複製し、係争図形を中国のメーカーに提供し、当該メーカーに係争図形を含む衣服の製造を依頼し、服飾店に卸販売した。そのため、検察官は、被告を商標法第95条第1項第3号、第97条前段及び著作権法第91条第2項違反で起訴した。裁判の結果、台湾台中地裁は、係争図形と係争商標とを対比した後、両者は類似していないとして、被告に無罪判決(112年(西暦2023年)度智訴字第12号刑事判決)を下した。しかしながら、裁判所は、両者は類似しないと判断する一方で、さらに以下のような判断をした。(1)訴訟記録の情報によれば、係争商標に関連する製品の市場シェア、係争商標の知名度、係争商標の関連事業者や消費者への認知度などを知ることはできず、係争商標が関連事業者や消費者に著名商標として広く認識されていることを証明するには不十分であり、消費者が係争図形を商品の出所の標識と誤認しないことが認められる(すなわち、商標として使用されていない)、(2)係争商標は著名商標ではないため、係争図形は商標ではないとする被告の主観は社会通念に合致するものであり、故意による侵害又は故意による模倣があったという被告の主観的意図を認めることは困難である。
 
台湾商標法は第70条で「著名商標」の保護を規定している。この規定により、「他人の著名な登録商標であることを明らかに知りながら、同一又は類似の商標を使用して、該商標の識別性又は信用・名声を損なうおそれがある場合」及び「他人の著名な登録商標であることを明らかに知りながら、当該著名商標の中の文字を、自らの会社、商号、団体、ドメインネーム又はその他営業主体を表する名称とし、関連する消費者に混同誤認を生じさせるおそれがある、又は当該商標の識別性又は信用・名声を損なうおそれがある場合」などの商標の希釈化(ダイリューション)の類型は、いずれも商標権侵害と見なされ、民事上の侵害責任を負うべきである。しかし、刑事責任の部分は「著名商標」を要件としていない。台湾台中地裁の上記判決では、法律にはない要件が導入されたが、理論的には不十分と思われる。
 

詳しく言えば、(1)の部分については、係争図形が商標として使用されているか否かは、被疑侵害品そのものから判断されるべきであり、すなわち、一般の社会通念及び市場の取引状況により、関連する消費者は、係争図形を、その商品又は役務の出所を表示し、他人の商品又は役務と区別する標識として認識するものであり(知的財産及び商業裁判所111年度民商訴字第25号民事判決を参照)、係争商標の著名性の有無とは無関係である。(2)の部分については、被告に主観上侵害の故意があるか否かも、訴訟記録内の事実証拠を斟酌し、被告が「明らかに商標権侵害を知っていた」かどうかを総合的に判断すべきである。被告が侵害のことを明らかに知っていたことを示す他の証拠があれば、係争商標が著名でなくても、当該侵害が故意であると判断すべきである。台湾台中地裁の上記判決理由は紛らわしく、商標権者の権利保護に多大な影響を与えると思われ、本件の今後の展開や、他の裁判所も同様の見解を採用するかどうかに注目する価値がある。

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