ニューズレター
智慧局、「車両用スマートコックピットシステムに関するコア技術特許動向分析」報告書を公表
自動車は多くの人々の生活における第3空間であり、近年、5G、人工知能(AI)、ビッグデータ、車載チップ、OS(オペレーティングシステム)などの技術の発展と成熟に伴い、消費者はすでにスマートフォンやスマートウォッチなどのスマートデバイスの利用に慣れてきており、自動車に対する需求も単純な移動機能の提供だけでは満足できなくなっている。その結果、次世代自動車業界は、「スマートコックピット(Smart Cockpit)」というコンセプトを打ち出してきた。
現在、スマートコックピットに関する規格が統一されておらず、パーソナライズされた、インテリジェントで没入感溢れる体験を提供できる発明はすべて、車両用スマートコックピット技術に分類することができる。経済部智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)は2024年1月3日に、「車両用スマートコックピットシステムに関するコア技術特許動向分析」と題する報告書(以下「本報告書」という)を公表した。本報告書の狙いは、関連業者に商品開発の方向性を示し、既存技術の研究開発資源の浪費を避け、潜在的な提携先や競争相手の特定に役立てることである。
本報告書では、ユーザーの視点に焦点を当て、スマートコックピットシステムに関連する技術を「視覚関連技術」「聴覚関連技術」「エンターテイメント体験関連技術」「インテリジェント・インタラクション関連技術」の4つに大きく分類している。各技術カテゴリーについて、技術概要、グローバル特許分析、台湾におけるこの技術カテゴリーの現状分析が提供されている。
図1:スマートコックピットシステムに関するコア技術の特許出願動向
視覚関連技術のうち、本報告書はスマートコックピット向けの視覚技術に関連するヘッドアップディスプレイ(HUD)技術を紹介し、画像生成ユニット(PGU)の4つの技術(TFT-LCD、DLP、LCOS、MEMS)、反射・撮像デバイス(自由曲面ミラー、風防ガラスなど)、ソフトウェアアルゴリズムからその関連特許技術の分布を分析した上で、この技術カテゴリーの中でソフトウェアアルゴリズム分野の特許件数が最も少なく、台湾メーカーがこの分野に参入する可能性があるという結論を導き出している。さらに、同報告書では、HUD市場は車載用だけでなく、航空用やスマートディスプレイ用も含めて巨大であると指摘している。台湾は産業チェーンが確立されているため、政府の適切な補助金やプロモーションにより、HUD製品の世界市場への参入が期待できる。
聴覚関連技術のうち、本報告書はスマートコックピット向けの聴覚関連技術を紹介し、音声対話システムの5つのカテゴリー(車載アプリケーション、車外アプリケーション、音声強調、マルチモーダルインタラクション、その他)と音響システムの3つのカテゴリー(音響入力、音響出力、音響環境)からその関連特許技術の分布を分析した。同報告書では、上位10出願人の分類技術の分布と技術繰延グラフの分析結果から、車外アプリケーションの音声対話に関する特許件数が最も少なく、自動車ネットワークの継続的な発展により、台湾メーカーが参入する可能性があると指摘している。
エンターテインメント体験関連技術のうち、本報告書は関連特許を「後部座席のエンターテインメント」と「没入型体験」の2つに大別している。後部座席のエンターテインメントは、早くから開発が開始され、様々な成熟したICT技術の応用に関連しているため、技術の敷居が比較的低く、応用範囲は広く、非伝統的な自動車メーカーが開発プロジェクトの入り口とすることに適している。没入型体験には、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)、複合現実(MR)技術の応用が多く含まれる。本報告書は、関連技術は新興技術ではないものの、その関連応用はまだ国情に関連しており、台湾のメーカーが参入の入り口を見つけやすくするために、より完全で将来を見据えた国家インフラ整備計画の青写真と整合させるべきだと指摘している。
インテリジェントインタラクション関連技術のうち、本報告書は運転支援システム、睡眠疲労検知、乗員モニタリング、電気自動車の航続距離不安の緩和など、スマートコックピットにおけるインテリジェントインタラクションに関連する技術を紹介している。台湾の特許出願は主に睡眠疲労検知と乗員モニタリングに焦点を当てており、これらのアプリケーションは、モジュール式のアプローチを採用し、車両のコアシステムの外部で個別に設計できるため、単一モジュールの研究開発に適している。本報告書は、大量の実走行テストデータを必要とする自動運転技術に比べ、生体信号や生理的信号は比較的入手しやすく、台湾メーカーが参入するのに適した方向であると指摘している。
本報告書は最後に、特許は企業の無形資産であり、会社が市場において競合他社を攻撃又は防御するための手段の1つであることを強調している。将来的に、スマートコックピット産業には、新興企業や新興技術を持つモノのインターネット(IoT)企業など、より多くの異なるタイプの企業が参加するようになるだろう。このような観点から、智慧局は、「新興産業積極型特許審査」や「産業連携特許審査面接」など、研究開発投資に関心のある企業が自社の特許取得を加速化させるために活用できる早期審査制度をいくつか導入している。