ニューズレター
外国のホテルが提供する役務の取引過程の一部が台湾で完了した場合、商標の使用として認定される
関係者たる王冠雄氏は、2020年4月20日、登録番号第104570号「CROWN」商標(以下「係争商標」という)には、商標法第63条第1項第2号に規定する取消事由があるとして、その登録取消を請求した。智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当)が審理した結果、係争商標の登録は取消されるべきとの処分を作成した。訴願人はこれを不服として経済部(日本の経済産業省に相当)に訴願を提起した。経済部が2023年1月16日(経訴字第11217300370号)に下した訴願決定の一部見解は以下のとおり。
一、 訴願人は2019年に、台湾の雄獅旅行社株式会社(ライオントラベル)と、その関係会社である雄獅旅行社を通じて提携契約を締結し、訴願人はオーストラリアを訪問する台湾人旅行者に対し、ホテルの宿泊などの役務を提供していた。また、雄獅旅行サイトにおけるオーストラリアの旅程の紹介文には、「CROWN PLAZA又はJUPITARホテルのビュッフェを是非ご賞味ください」といった文言が記載されていることから、訴願人は、雄獅グループとの提携関係を通じて、台湾消費者に対しオーストラリアの旅館やホテルの役務を販売していたと判断できる。
二、 また、2017年9月と2018年6月に、台湾消費者は「Tripadvisor」及び「ezTravel 易遊網」のウェブサイトを通じて、訴願人のホテル、クラウンタワーメルボルン(CrownTowers Melbourne)の宿泊施設を予約し、同ウェブサイトにコメントを残している。このことから、訴願人は、上記期間中、台湾の予約サイトを通じて、台湾消費者に対し、そのオーストラリアにある旅館やホテルなどの役務を販売していたことが分かる。
三、 以上のことから、訴願人は、台湾の旅行代理店や宿泊予約サイトを通じて、オーストラリアにある「CROWN」旅館やホテルなどの役務をマーケティング・宣伝し、台湾消費者にオーストラリアに行って消費するよう促したことを示すのに十分である。訴願人は、台湾にサービス拠点を設けておらず、台湾で旅館やホテルなどの役務を運営していないが、台湾消費者は、海外旅行前に、訴願人と提携している台湾の旅行代理店や台湾の宿泊予約サイトを通じてその役務を予約し、そのあと、海外でその旅館やホテルなどの役務を利用することができる。このことから、訴願人が提供する係争商標の旅館やホテルなどの役務の取引過程の一部は台湾で完了しており、台湾消費者は台湾においても係争商標によって表彰される役務を取引することができ、係争商標は台湾においてそのサービスの市場又は販路を開拓又は創出するという経済的意義を有しており、商標の属地主義の精神に合致し、係争商標を旅館やホテルなどの役務に使用することは商標法に規定される商標の真の使用の要件を満たしていると認定するに十分である。
以上をまとめると、経済部は、原処分を取り消し、原処分機関に4ヵ月以内に改めて適法な処分をするよう命じる旨の訴願決定を下した。本件は現在、知的財産及び商業裁判所において訴訟係属中である。