ニューズレター
健康食品の表示とその商標登録出願上の注意事項
一、前言
国民の食生活の衛生・安全を向上させるため、台湾衛生福利部食品薬物管理署(日本の厚生労働省医薬食品局に相当、以下「TFDA」という)は2022年7月1日(製造日を基準とする)、新たに5つの食品関連措置1を実施し、そのうちの1つが、「健康食品」(日本の特定保健用食品(トクホ)に相当)の検査・登録を申請して許可(認証)を取得していない場合、食品の名称に「健康」の文字を表示してはならないという規定である。実際、「健康食品」のパッケージには、食品表示や検査・登録の規制に関わる商品名や内容物情報などの表示のほか、マーケティングのために、商標も印刷されており、これは商標法に基づく商標出願審査実務に関わるものである。本稿では、健康食品事業者がその両方に対応できるよう、健康食品の表示とその商標登録出願に関する最新の規制と実務について解説する。
二、健康食品の表示について
健康食品管理法第2条第1号では、「健康食品とは、保健効果を有する食品であって、その旨の表示又は広告をしたものをいう」とされており、同条第2号では、保健効果とは、「人々の健康増進に役立ち、疾病リスクを低減し、その有効性について確かな科学的根拠があるものを指し、人の疾病を治療又は改善することを目的とする医療効果ではなく、中央主務官庁によって公告されたものに限る」と定義されている。同法第7条により、健康食品の製造又は輸入は、TFDAに検査・登録を申請し、許可を受けて初めて製造又は輸入が可能となる。また、同法第6条により、同法の規定に基づく許可を得なければ、食品に健康食品と表示又は広告してはならない。つまり、健康食品管理法では、健康食品について明確な定義と規制が設けられているのである。
次に、食品安全衛生管理法(以下「食安法」という)第28条第1項では、「食品、食品添加物、食品用洗浄剤及び中央主管庁が公告した食品器具、食品容器又は包装の表示、宣伝又は広告は、不実、誇大又は誤解を生じやすいものであってはならない」とされている。そこで、国民の食生活の衛生・安全を向上させるため、2022年7月1日に施行された改訂「不実、誇大、誤解を生じやすい又は医療上の効能があると認められる食品及び関連商品の表示、宣伝及び広告に関する認定準則」(中国語:食品及相關產品標示宣傳廣告涉及不實誇張易生誤解或醫療效能認定準則、以下「係争準則」という)第4条第2項において、「『健康』という文字が食品の名称の一部として使われている場合、その名称は誤解を生じやすいとされている。ただし、許可を取得した健康食品はこの限りではない。」とされている。上記規定により、「健康」という文字を商品名として使用できるのは、検査・登録を経て許可を取得したものに限られる。本条新設の立法目的は、食品の名称に「健康」という文字がついているために、消費者がその食品をより健康的だと誤解するのを防ぐことである。上記規定に違反した場合、食安法第45条により、4万台湾元以上400万台湾元以下(約17~1,700万円)の過料に処され、同法第52条により期間を定めて回収・是正が命じられる。
また、TFDAの実務見解によれば、商品の「登録商標、ロゴ、ブランド、シリーズ名」に「健康」又は「Health」の文字が表示され、「商品名」と「並列又は縦列」されている場合、「商品名」の一部ではないものの、表示全体が消費者に「商品名」の一部であると誤解させやすい場合、係争準則に違反するとみなされる。
三、健康食品の商標(商標図案又は指定商品名に「健康」の文字が含まれる)について
係争準則の施行に伴い、智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)も、商標図案又は指定商品名に「健康」の文字を含む商標登録出願の審査原則を公表している。
商標図案については、商標法第30条第1項第8号に「商標が次の各号のいずれかに該当するときは、登録を受けることができない。公衆にその商品又は役務の性質、品質又は産地を誤認、誤信させるおそれがあるもの」と規定されている。現在、智慧局の実務見解によれば、商標図案に「健康」の文字が含まれ、それが商品名と結合することにより、消費者に容易に健康を連想させ、誤解を生じさせやすい場合、上記規定により、智慧局は商標出願人に「健康」の文字を削除するよう通知することができる。「健康茶」、「健康卵」、「健康オートミール」などの商標図案は、いずれも公表された例であり、智慧局から「健康」の文字削除の通知を受ける可能性がある。商標図案に含まれる「健康」の文字が削除されても、消費者に与える印象が本来の商標図案と同じで、両者が同一の出所に由来するものと認識されるときは、商標出願人は、当該「健康」の文字の削除を求める書面を智慧局に提出することができる。
注目すべきは、商標図案に「健康」の文字が含まれるものの、商品名と結合又は並列されておらず、表示全体から消費者が商品名の一部と容易に誤解しない場合、例えば、商標図案が「おいしく健康(中国語:美味健康)」、「自然・健康・ウェルネス(中国語:自然健康養生)」であれば、商標法第30条第1項第8号に該当しないと智慧局が考えている点である。
また、指定商品名について、指定商品が食品で、指定商品名が「健康」に「商品名」を加えたものである場合、智慧局は、それが係争準則に違反するため、認めることは適当でないと考えている。よって、智慧局の審査実務では、商標出願人に対し当該商品名称を削除又は補正するよう通知する。例えば、第32類の商品に使用を指定する「健康酢」という商品名は、指定商品名として不適当である。
四、まとめ
以上をまとめると、2022年7月1日に施行された「健康」食品の表示に関する係争準則を遵守するため、食品事業者は自社の食品の名称に「健康」の文字を加えたい場合、健康食品管理法の関連規定に従って検査・登録を申請し、許可を取得しなければならない。また、商標出願審査の実務も係争準則に対応して更新されており、商標出願人は、その商標図案とそれが使用を指定する商品名に注意を払う必要がある。商標図案に「健康」の文字が含まれ、商品名と結合することで、消費者に健康的な商品であると容易に連想させる場合、智慧局の実務見解によれば、商標法第30条第1項第8号に違反し、商標の指定商品名が食品で、「健康」の文字を含む場合、智慧局は商標出願人にその商品名の削除又は修正を通知することになる。
1食品表示、食品原材料添加物管理、食品安全モニタリングを中心とした食品関連の新たな措置は、以下の5つである。
1. 健康食品の許可のない食品の名称には「健康」の文字を表示してはならない。
2. インジェクション加工肉は名称に「脂肪注入」と表示し、注意書きを付記すること。
3. 二酸化炭素、ペクチン、グアーガム、ローカストビーンガムは食品添加物として扱うことになる。
4. カッシア瘻(Cassia fistula L.)の果実を食品原料として使用してはならない。
5. 食品事業者は、食品安全モニタリング計画の内容・項目を策定しなければならない。