ニューズレター
電子署名法の改正案が行政院で可決される
電子署名法の改正案が行政院で可決される
電子署名の発展に有益な法制度の環境を構築するため、行政院(日本の内閣に相当)では2024年2月29日に「電子署名法」の改正案(以下、「改正案」といいます)が可決され、その後立法院(日本の国会に相当)へ審議に送られました。立法院で可決されれば、「電子署名法」が2002年に施行されて以来の初めての法改正となり、我が国の電子署名の法制度に大きな影響を与えることとなります。
今回の改正の主なポイントは以下のとおりです。
一、司法手続きの特殊性を考慮し、司法手続きには「電子署名法」の規定を適用しないことが定められました。ただし、法令に別段の規定がある場合には、かかる規定に従うことになります(改正案1条2項)。
二、電子文書、電子署名が実体文書や署名と同等の効力を生じるように、電子文書及び電子署名はそれが電子形式であることのみをもってその法的効力を否定してはならないと規定されました(改正案4条)。
三、電子文書、電子署名の普及・運用を推進するため、電子文書、電子署名について「相手方の同意」を必要とする前提が削除されました。ただし、電子文書又は署名の使用に相手方がいる場合、電子形式を採用する前に、合理的な方法で相手方に拒否する機会を与えなければならず、相手方に告知したが反対しなかった場合は、電子形式を採用することに同意したものと推定されます(改正案5条4項)。
四、デジタル署名と電子署名との関係性をより明確にし、証憑機構が発行する証憑を有さないその他の電子署名と区別するため、デジタル署名は証憑機構が発行する証憑を有する一種の電子署名であると規定されました。また、デジタル署名の安全性及び信憑性がその他の電子署名より遥かに高いことを考慮し、デジタル署名に「本人が自ら署名又は押印したと推定する」効力が与えられました(改正案2条3号及び6条)。
五、行政機関が「電子署名法」の適用の排除を公告できるとする規定が排除されました。将来、法律又は法律により具体的、明確に授権された法規命令をもってのみ「電子署名法」の適用を排除することができるようになります。また、行政機関が改正案の施行前に行った公告は、改正案の施行から3年後に失効することになります(改正案11条及び19条)。
六、我が国の国際的地位の特殊性に鑑み、対外的交流・提携において二国間又は複数国間で締結された協定に限らず、国際標準組織が定める安全技術基準を前提に、デジタル発展省(中国語:数位発展部)が外国の証憑機構に許可を与える際に、「国際互恵」のほか、「双方の証憑機構で電子署名又は証憑技術の提携計画又は技術の相互承認の手配を共同で行っていること(証憑安全技術標準の共通性および提携)」を考慮するという原則が新たに規定されました(改正案15条)。
また、デジタル発展省のプレスリリースによると、将来デジタル発展省はデジタル広告プラットフォームに対して、投資又は政治に関する広告を掲載する際、広告主のデジタル署名の検証を行うよう求める予定です。これによりプラットフォームがKYC(本人確認手続き)を行いやすくなり、偽アカウントを根源から減少できるだけでなく、プラットフォームを通じて共同防衛ができ、同一人物が出したデジタル詐欺広告をいち早く削除することができるようになります。
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