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2022年専利審査基準第1篇「方式審査と専利権管理」の一部改訂



法令の解釈に沿い、裁判所の見解を専利(特許、実用新案、意匠を含む)出願の方式審査に反映させるため、智慧財産局(台湾の知的財産権主務官庁。日本の特許庁に相当。以下「智慧局」という)は、2022118日、「專利審査基準」第1篇「方式審査と専利権管理」(以下「審査基準」という)第1章、第3章から第8章、第14章、第17章、第19章及び第20章の一部を改訂し、改訂案は2022121日に適用された。今回の改訂のポイントは以下のとおりである。
 
一、1章「専利出願と専利関連事項の手続き」の第1.2.4節「署名捺印の審査」
 
専利出願に必要な各種書類への署名・捺印について、従来の専利審査基準では、その態様や方法を特定せず、電子ソフトによる署名の可否も明確にしていなかった。
 
今回の改訂では、署名・捺印は対比可能な形式や外観を有していればよいと明確に定められ、電子ソフトによる署名も認められた。その改訂内容は以下のとおり。「証明書類への署名・捺印は、署名者の署名、捺印又は電子署名と対比可能な形式や外観を有していれば、有効なものと推定される。証明書類への署名・捺印は、出願書類の情報と対比可能な形式や外観であれば、紙媒体への署名でも電子ソフトによる署名でもよい。電子ソフトで作成した署名の形式や外観に疑義が生じた場合、専利主務官庁は、所定の期間内に電子署名の作業履歴を証明する書類を提出するか、署名捺印された紙媒体を補完するよう出願人に通知する。」
 
例えば、署名・捺印の形式や外観が自然人の署名と同じに見え、当該書類の署名者の名前と対比可能な場合は「認められる署名・捺印の形式や外観」であるが、コンピュータの入力のように見え、自然人の署名か否かを確認できない場合は「疑わしい署名・捺印の形式や外観」となる。
 
二、3章「専利出願人」の第3.1節「発明者の変更」、4.1節「出願人の氏名又は名称の変更」、4.5節「発明者の氏名の変更」
 
現在の専利審査実務では、特許出願の発明者・出願人は、原則として出願時の願書に記載されたものを基準としており、その後、変更がある場合、それに応じた証明書類や説明書類を提出する必要があるとされている。また、改訂前の審査基準では、発明者の氏名や出願人の氏名・名称を変更する場合、「主体の同一性に変更がないこと」を前提とし、「氏名(名称)変更、誤記又は誤訳」などの原因に限り変更を申請できるとされている。
 
今回の改訂では、さらに上記各節において添付すべき書類を調整し、各界の参考となるよう、多くの事例を追加した。そのうち、改訂後の審査基準第3章第4.1節「出願人の氏名又は名称の変更」に追加された「例7:同一主体に帰属する異なる出願人の名称変更」では、「異なる出願人が同一主体に帰属する場合、出願人又は代理人が事実を述べ、関連証明書類を添付して出願人の名称変更を提出すれば、出願人が主体の同一性を有するため、その変更申請を受理することができる」とされている。審査基準には、この改訂が最高行政裁判所108年(西暦2019年)度上字第1169号判決(判決日:20211111日)の趣旨を参考にして行われたものであることも記載されている。「同一主体に帰属する異なる出願人」の定義については、改訂審査基準には具体例が示されていないが、上記最高行政裁判所108年(西暦2019年)度上字第1169号判決の背景事実を参照できる。同判決は、「特許出願人が米国国立衛生研究所National Institutes of Health以下「NIH」という)から米国保健福祉省United States Department of Health and Human Services以下「HHS」という)に変更されたことで、出願人の「主体の同一性」に変更が生じたか否かが争点となったものである。最高行政裁判所は、NIHHHSの下級機関であるとし、「...米国連邦法の規定により、特許出願権は... HHS(米国政府を代表)に帰属すべきであり、...係争出願の第2出願人がNIHからHHSに変更されても、主体の同一性に影響を与えないため、その特許出願権はHHSに帰属すべきである」とし、さらに、「出願人がNIHからHHSに変更された後も、『主体の同一性』を有している」と判断した。
 
また、今回の改訂では、出願時の添付書類に矛盾がある場合、又は出願人の誤記だと判断できる場合は、その後の補正は出願事項の変更に当たらないことも明確に定められた。例えば、出願人の氏名又は名称が願書に記載された出願人の署名・捺印と一致せず、出願人が補正を行い、又は期間を定めて補正するよう通知した場合、当該氏名又は名称の変更申請に係る手数料は不要である(本章第4.1節の例8を参照)。
 
三、5章「出願日」の第1.1節「願書」
 
改訂前の審査基準では、「願書における出願人の記載に誤記があり、出願後に正確な出願人に訂正した場合は、出願人が確定した日を出願日とする。」とされているため、出願日の確定は、願書に記載された出願人と連動関係がある。ただし、「正確な出願人に訂正すること」は、前述の「主体の同一性を変更しておらず、氏名(名称)変更、誤記又は誤訳などの原因により出願人の氏名又は名称の変更を申請すること」とは異なり、後者は出願日の認定に影響を与えないことに留意する必要がある。
 
今回の改訂では、出願日の取得に影響を与える(出願日の繰り下げ)事情を明確にするため、上記規定を、「願書に記載された出願人に誤記があり、出願後に正確な出願人に訂正する場合は、訂正前と訂正後の出願人が主体の同一性を有さないため、出願人が確定した日を出願日とする。」に修正するだけでなく、上記事情を箇条書きにして「出願主体の変更」「出願人の追加」「出願人の削除」の3種類に限定している。
 
四、7章「優先権及びグレースピリオド」の第1.5節「国際優先権の証明書類及び書類の提出期間」
 
今回の改訂では、「国際優先権の証明書類に関する誤った態様の例示」として、「米国専利出願の全ファイルのコピー」「米国専利出願の受領書(Filing Receipt)と明細書のコピー」「ハーグ協定に基づく意匠登録出願の受領書と明細書のコピー」「EU意匠登録出願の登録査定に関する証明書類」が追加された。
 
五、8章「生物材料の寄託」の第4節「生物材料の寄託証明書類」
 
寄託証明書類について、今回の改訂では、「ブダペスト条約により承認された国際寄託機関ではない場合、それが発行する証明書類には、当該生物材料の生存事実に関する情報が含まれなければならない。生存情報がない場合は、法定期間内に生存証明書を補完するよう出願人に通知し、期間が経過しても提出しなかった場合は、寄託しなかったものとみなす。」と新設された。
 
六、19章「専利権の変動」の第6節「質権の設定登録」の6.2節「備えるべき申請書類」
 
「専利権を目的とする質権の設定登録の申請」に必要な書類について、智慧局は、20221020日、専利法施行細則第67条の改正を公表し、従来から義務付けられていた専利権を目的とする質権設定登録申請における専利証の提出要件と専利証への質権関連事項の追記要件が削除された。今回の審査基準の改訂では、上記の改訂条文に合わせて質権の設定登録に必要な書類の内容も修正された。これにより、出願人が「専利権を目的とする質権の設定登録を申請する」際に、専利証の提出が不要になった。
 
七、その他の改訂内容
 
その他の改訂内容としては、法令条文及び方式審査の実務に合わせて行った文言修正、各章節の内容の誤記の修正などがある。
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